「ご安産一座」医科歯科公演

「ご安産一座」というのを、年に1回、東京医科歯科大学でしています。これは今を去る10年前、「いいお産の日」第2回で会場に分娩台を展示しようと決まったとき、助産師ネットワークJIMON(ジモン)で日赤医療センター助産師の中根さんと悪ノリし、始めました。

「分娩台とか、産科の機械とか展示するけれど、解説したいよね」「ただ解説するだけじゃおもろないよねえ」「じゃ、お産しゃおうか」

‥‥まあ、そんな風に始まったものなのですが、結局、分娩台のお産よりも、その続きにプラスした「たたみ上でのフリースタイル出産」編がウケました。以来、全国各地のお産イベントにジモンの助産師さん達が出張公演に行ったり、イベントの1つの定番出し物として模擬分娩が根付くことになるのです。

一応、元祖「ご安産一座」である私たちの今の対象は、看護師さんになる学生さんたち。授業の一環としてフリースタイルの出産劇をやっているのです。キャストは産婦役は賛育会病院の助産師さんでやはりジモンの中沢さん、助産師役に中根さん、口上役が私です。

中沢さんが大きなお腹にTシャツとスパッツ姿で現れると、学生さんは「おーーっ」と大喜び。しかし、すぐに窓のブラインドが降り、天井の電灯が消え、暗い中で産婦のうめき声がしてくるとみんな神妙な雰囲気に。

今は男子学生も看護のクラスにひとりはいます。彼は、いきなり産婦に呼ばれ、夫役になる運命にあります。

いよい産まれそうになると、学生さんたちはバババと集団で走り寄ってきて、お人形が産まれてくるところを嬉々としてのぞき込みます。その時の、みんなの大きく目を見張った顔がイイです。

そのあと、フリースタイル出産について、助産院や助産師について、夫立ち会いについてたくさんの質問攻めを受けて、けっこう大興奮のうちに授業が終わります。

私たちにとって、フリースタイル出産はもう長いおつきあいです。ご安産一座で中沢さんが産んだ子はもう100人くらいだとか。でも、いまだに、こんな看護の道に進もうという人たちさえこうした教育で初めて「分娩台がなくても産める」と知る、そんなケースが多いのです。

お産が変わるというのは、自分のお母さんのお産話が変わり、テレビのお産シーンが全部変わってようやく何とかなるのでしょう。

中沢さんは、あともう100人くらい産まなきゃ、かもね。

<写真>クラスマックスに向かうご安産一座。 2005/05/12