お産のとなりで起きていること

新生児集中治療室(NICU)の取材を始めていて、今週は毎日のように行っていました。産科の取材だけしていていたらわからないな、ということがたくさんある世界です。

早産で赤ちゃんが生まれるということがどれだけ大変なことか–救急車にとってNICUはゴールですが、ご本人たちにはここからがスタートなのだと感じます。生育限界が何週であっても、やはり、お母さんの子宮にいるはずの赤ちゃんを、機械がそのかわりをして育てていくのは綱渡りをしていくようなものです。そして、無事に予定日を迎え、退院していっても、9歳になるまで定期的な健診を続けていくというのですから、本当に長い時間をかけ、ゆっくり、ゆっくりと子どもの成長を待つことになります。

お産という世界から見ていると、ほとんどのお産は元気な赤ちゃんが生まれていますが、ここにはそうしたお産はひとつもありません。

ある病院では、助産師外来を担当する助産師さんが満たさなければならない基準の中に新生児集中治療室での研修を受けていることがふくまれていました。私は、今、その研修を経験していようなものかもしれません。

親子を出発させるための医療はリレーです。不妊治療から産科へ、産科から新生児科へ、そして新生児医療からは小児科へあるいは福祉へとバトンが渡されていきます。ひとりとひりの走者が、自分だけよく走れても意味がないし、自分にバトンが渡ってきたときにどんな試合展開になっていようが自分の役割を精一杯果たすのがチームです。

ただ、本当の走者は赤ちゃんであり、お母さんであり、パパですし、リレーの中身は医学的なことだけではとても決められないし、赤ちゃんが生きた時間の長短でもないように思います。 2009/03/20