研究機関の遺構「桑ハウス」

私が住む日野市には、今はスポーツ公園や森になっている場所にかつて日本の近代化を支えた養蚕の国立研究機関があり、その広さは施設群だけで9ヘクタールもあったそうです。
このほど、残されたただ一棟の蚕室「桑ハウス」(愛称)が国の有形文化財に登録されました。

市のアートフェスティバルに使われて特別に中が見られた先日、中に入って、保存プロジェクトにかかわって来た建築家の方の説明を聞きました。

中に入ると壁から天井まですべてが白い漆喰。あたたたかい!梁にはミニマムな装飾カーブ。窓の木枠。電灯もなく薄暗い中で、そのモダン建築ぶりが、じわじわと見えてきました。

右手ドアの奥は長い廊下が一直線に伸び、蚕がさわさわと桑を食んでいたであろう蚕室が続きます。かつて蚕室と廊下の間には大きな障子戸があり、冬場をしのぐ暖房はレンガ造りの囲炉裏だったとか。最近、消防署から偶然発見されたという設計図も見られましたが、文字の一字一字もデザインされていてびっくりしました。

中心になっていた建物は、門柱や玄関の遺構だけが残っています。まるで誰かが植えたかのように、そこには大きな桜の木が生えていました。

ここがいつか修繕され、もしもギャラリーなどになったら・・・緑の中で時間や命を感じるような写真展をしてみたいと妄想しました。実は私としては生涯初の、展示なるものをしてみたいという衝動です。

長らく活動されてきた「仲田の森遺産発見プロジェクト」の皆さんの努力に敬意を表し感謝申し上げます。駅前に大型ショッピングセンターを作ることも大切なのかもしれませんが、人の心をとらえる町づくりとは何かなど、プロジェクトから教えられることもたくさん。

仲田の森遺産発見プロジェクト
こちらから

2017年8月21日