3日間の福島取材、帰路につきました。昨晩泊めていただいたのは、福島県助産師会が、避難所にいる妊婦さんや赤ちゃんの保護のために立ち上げた会津助産師の家おひさまです。
今は、母乳トラブルを起こしたお母さん、家族の協力が得られないお母さんたちの駆け込み寺になっていました。
ここの際立った特徴は、誰でも利用できる1日三千円という他県の産後ケアセンターの1割か数割程度の破格と言ってよい利用価格です。
もう少し高いとお母さんたちはガマンしたり母乳をやめたりしてしまうと助産師さんたちは言います。それはそうですよね。今、日本では母乳ケアがほとんどない出産施設もたくさんあり、母乳が出なくて大変で「子どもは二度といや」と思う育児も「当たり前」のことだと思われています。
福島では、非常事態が、産後のお母さんたちの実態をあぶり出したのです。しかし、震災後の「非日常」の中にしかない報道合戦や興奮状態がない日常の中で、場は保たれるのでしょうか?この場を守るために、福島県助産師会は必死に動いてきて、災害時の経済的支援が終わると福島県の少子化対策予算を何とか獲得しました。
利用していったお母さんたちの書いていったノートを見ると、ここの生活で心も身体もゆとりを取り戻し、母乳が湧いて帰宅することができた様子が手に取るようにわかりました。
産後ケアは時の話題ですが、高額な産後ケアがほとんど。経済的ゆとりのある都心部のママたちのホットな話題にすぎない気もします。そこが盛り上がるほど、ほんとうに必要な人は存在さえ発見されず、ケアは当然届かないというもどかしさが募ります。
福島県にできたことは他県でもできるはずだ、と県助産師会会長の石田さんは言います。 2015/10/25