2015年05月一覧

妊娠教育が少子化社会対策大綱に

今春、少子化社会対策大綱に「妊娠・出産の医学的・科学的に正しい知識の教育」が入りました。

『助産雑誌』(医学書院)5月号、と出たばかりの6月号 連載「やっぱり知りたい少子化のはなし」は前後編2回に分けて「出産年齢と妊孕性について伝える方法」について書きました。少子化大綱がそうなったということは私がこの約10年間やってきたことにとってひとつの区切りと私は感じましたので、これまでの流れをまとめてみたのです。

前半は、私が2003年に『アエラ』の取材で初めて体外受精の年齢別データを見て驚いたことから始まり、女性ファッション誌での企画や『卵子老化の真実』関連の仕事を通じて考えてきたことなど、個人の努力、民間の活動で広報活動が行われていた時代について。

後半は、大分県、岡山県のケースを通じて国、自治体が動き出し、助産師さんたちも晩産化に対応していくことを強く求められてきた様子をお知らせしています。
2015/05/31


樫の木を伐る

子どもが小さいとき、おそらく、私か子どものポケットか何かに運ばれてやってきた1個のドングリ。それがわが家の庭の壁ぎりぎりの所に根を張り、二十年くらいの時を経て枝を広げ、生い茂っていました。

それは二階にある私の仕事部屋の高さになり、そして、そこからさらに、もっと高くなって、私の仕事部屋のベランダは木の中にいるような状態になっていました。

この数年は毎年のように小鳥が巣を作り、仕事中、春は巣から聞こえてくる絶え間のない小鳥のおしゃべりが聞こえていました。こうなって初めてわかったのですが、鳥は夜中でもよく鳴きます。

風の日は、森の音がしていました。

秋になると、きれいなグリーンのドングリが玄関先に落ちてきて、秋の始まりを知りました。

落ち葉とドングリの季節ともなると、これは、もう住宅地にはあり得ない様子となって体力勝負そのもの。1日何回掃いても、まったく追いつかないありさまでした。

やがて、いかにも大きくなってきて壁が割れてしまう怖れも出てきたので、伐採を考え始めたのはもう何年も前のこと。それから、どこかで大きな高い木がのびのびと枝を広げているのを見る度に、うちの木もここに生えることができればよかったのに、とそんなことばかり思っていました。

好きなだけ、空に枝を広げる木の姿は本当に素晴らしいものだと思います。

昨年に見積もりをとって、でも出生前診断の本を仕上げようと思っていたので、伐ることに耐える自信と余力がありませんでした。

でも今年は、小鳥の声が全く聞こえなくなって巣を落としても大丈夫だと確信できたことを好機として水落さんという植木屋さんにお願いしました。長女と長男が学校で一緒だったおうちのパパなんですが。

何か準備しておくことはありますか?

電話でそう聞いた時に、水落さんは「お塩を杯一杯くらい」と言いました。それを聞いただけで、もう胸が締め付けられるようでした。

その日の朝が来て、水落さんはまず道具の準備をすませ、そしてお塩を私から両手に受けて木の根元にふりかけ、木と話をしてくれました。水落さんはクリスチャンなので、お祈りはアーメンで終わりました。

水落さんは、見たことがないような、本当に丁寧に方法で、少しずつ枝をはずし、幹を小さくしていきました。最小限のチェーンソー、手のこ、そしてロープの作業。陽ざしの中を、木挽きの粉が小雪のように舞い続けました。

うれしいことに、幹がもう一本根元から別れていて、それは残すことができました。太い木に押されて曲がっていましたが、曲がっていないところまで切り戻してもらい、手を入れてもらいました。

そして、今は季節がよいので、切り株からも、新しい芽が吹いてくるだろうということでした。それは、剪定していけば、もう同じことは繰り返さなくてすみそうです。

大好きだった大きな木。大きな木と一緒に暮らすことができて本当によかった。木がくれた風の音の記憶や、隣にいるように暮らした小鳥たちの記憶はいつまでも消えることはありません。

大きな木が一本あるだけで、そこで生き物たちは命をはぐくむことができ、人は癒やされます。そのことを教えてくれて、そして私にいつまでも続く安らぎを心の深くにくれた一本の私の樫の木に、心からありがとうと言いたいです。そして、新芽が吹くのを待ちたいと思います。
2015/05/27


日本ダウン症協会は出生前診断に反対か

17日、日本人類遺伝学会教育推進委員会、遺伝カウンセリング学会遺伝教育委員会によるシンポジウム「遺伝医療関係者と報道関係者による合同シンポジウム 「メディアに求めること、メディアが求めること」に行きました。

日本ダウン症協会の水戸川さん、日本ダウン症協会のメディアの影響に関する説明に『出生前診断−出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』に納めた玉井さんの言葉を「この本が一番よく書かれているから」といっぱい使ってくれてありがとう。うれしくて今までのいろいろなこと、ぐるぐると思い出しました。

それにしても日本ダウン症協会は大変でしたね。『出生前診断−出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』に詳しく書きましたが、取材陣が猛烈に押しかけてきた時は、協会は新型出生前診断に反対していたわけではないのに「怒って見せてくください」と要求する局もあったそうです。

こうした「対立構図」を演出する報道が続いたために、同協会は高齢出産の娘さんを持つご家族などから激しい抗議を受け続け、報道合戦の間、会員に危害が及ぶ恐怖に陥っていたのです。そして協会の出生前診断に対するデリケートな想いをじっくり聞き取り、伝えたマスコミは、ありませんでした。

上のお子さんにダウン症候群があった場合、次の妊娠で検査をどうするかという問題は、簡単には理解することができないほどとても繊細な問題です。私も何人もの方の涙に触れて、やっと、不十分だとは思いますが、少しずつ理解しました。

報道のあり方は難しい問題ではあります。いつもそう思います。取材される方が出して欲しいことと、報道が出したいことが違う。でも少なくとも、報道は、報じられる者に害を与えてはいけない。完全に防げる報道など無いのだけれど、ミニマムに、という努力はとても大切なことだ。
それを改めて確かめた日でした。私も日頃自分勝手な取材をやっていることと思いますが、お気づきのことは、どうぞ私の方にストレートに言って下さい。学びますので。  2015/05/19


日赤助産師学校でイメジェリーの授業

日本赤十字社助産師学校でイメジェリー(Guided Imagery )の講義4時間。毎年やっていますが、今年は学生さんたちに「分娩」「産後ケア」いずれかを選んでもらい、グループワークでイメジェリーを創作してもらいました。板書は学生さんたちの作品です。

●赤ちゃんが海の中から太陽の光にむかって浮上していく だんだん大きくなるバブルリングをくぐりながら 太陽の方に手を伸ばしながら
●赤ちゃんが楽しそうに虹を上っていく 上り詰めたらそこから滑り台を滑り降りて一気に生まれる
●波が陣痛を表し、波に揺られながら光の方に近づいていく赤ちゃん
●温かい風と陽の光の中、お母さんの身体が温まります その熱が伝わって赤ちゃんが温まります お母さんと赤ちゃんは一心同体です そして赤ちゃんがごくごくと音を立てておっぱいを飲み始める
●乳腺は何本もの河川 光の方へ蕩々と流れ、そしてそこから放射していく
●授乳は”パワールーム”の中で赤ちゃんとお母さんがパワーの交換をすること

どのイメージも、とってもすばらしいですよね。(なので黒板消すのがもったいなくなり、皆さんの許可を得てこちらにご紹介します。荻原先生、ありがとうございました。) 2015/05/16


卵子老化の座談会

まもなく発売になる『BAILA』(集英社 30歳前後の働く女性がターゲット)の別冊付録『妊BAILA』で読者と卵子老化座談会をやっています。ライターさんが書いてくれた言葉なので自分が普段話している言葉とは違うのですが、わかりやすいです。ジャストにその年頃な読者の身体を思いやる編集者さん、ライターさんの思いやりを感じる冊子でした。私もこれからこんな全体の流れがわかる予習ブックをやりたいと思っていたので参考になりました。 2015/05/15


ちょっと他に類を見ない感じのスイーツ

『出生前診断−出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』の打ち上げでラストに登場した画期的なデザートプレート。苦楽をともにしていただいた編集者さんたちからのうれしいお祝いでした。ありがとう!!2015/05/14


科学ジャーナリスト賞の贈呈式

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5月12日、日比谷のプレスセンタービルで科学ジャーナリスト賞の贈呈式があり、物理学者・米沢富美子先生からのご講評や記念のオーナメントをいただいてきました。講評で大賞と激しく競ったと何人もの審査員の方から言われて本当にびっくりしましたが、私はもう「よくぞ、この難しいテーマにここまで斬り込んだ」と、この百戦錬磨のジャーナリストの方たちの会でご高評をいただき、心から満足です。命の危険を感じながら核についての取材をされた記者さんから「受賞で疲れが吹っ飛んだ」という言葉がありましたが、私もまさにそんな気持ちです。

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私が、これからも魂こめてまたこのような単著本を書いていけるとしたら、それは、この賞のおかげだと思います。
そして、受賞作を書かせていただけたのは、これまでに取材にご協力いただいた方のご協力とその方たち自身のお仕事やお子さんたちへの熱い思いがすばらしいおかげです。

そして本を一冊購入してくださった方、ブログやSNS、レビュー、推薦図書リストなどに書いて発信してくださった方々のおかげです。これこそ、世間に私の書き手としての適性に一票を入れてくださる行為で、ひとえにそれに支えられて書き手という生き物は今日の1日を生存しています。
これからも、いうより、実は「これからいい仕事したいな」と、そんなノリになっている私を夫は呆れて見ていますが、そこは年の功で美味しいものを作って食べたりすることも忘れず楽しくやっていきたいなと。

写真は本の仕上げで昼夜を問わず二人三脚のパートナーになってくださっていたフリーランス編集者さんでライターでもある安里麻理子さんと。本のお産婆さんをしてくださった彼女の支えなしにこの本はありませんでした。改めて、みなさまに心よりお礼を申し上げます。

そして、どうぞ、これからも、私に本を書かせてください❕

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2016年5月13日


獨協大で「出産とはどんな体験か」を講義

今日は獨協大学の全学総合講座「ジェンダーで眺めてみれば」のゲスト講師として「出産とはどんな体験か」というお題の授業をしてきました。医療系ではない大学の講義は初めてで半数近くが男子学生。陣痛の話に誰かが苦しい気持ちになってしまわないかとひやひやしましたが、生理的なプロセスからオキシトシンやリラクセーションのこと、無痛分娩、晩産化、不妊治療、出生前診断のことまで一気に話してきました。
伝えたかったのは、お産はひとりひとり違うものだということ。
最後に、新しい命を迎えるとはどういうことか伝えるために、International Down Syndrome Coalitionの下記の動画をyou tubeから再生したのですが、これはかなり学生さんたちの関心を集めたようです。私が、『出生前診断−出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』を書いていたときに時々見ていたものです。

◆International Down Syndrome Coalition WDSD March 21, 2012

女子学生はもとより男子学生もほとんど寝てしまうような学生はいなくて、乗り出して聞いてくれた子も少なからずいたように思います。お産の話を聞く機会はかなり貴重なはずで、私も「産みたくなるまで、この話、頭の片隅にとっておいてね!」と強く思いました。 2015/06/11