2016年07月一覧

妊活漫画家のポテ子さんと

不妊治療を「受ける側」からリアルに伝えてくれる妊活漫画家・赤星ポテ子さん。「あ、この治療を受ける時ってこんな気持ちなんだ」と教えてもらうことがいつぱいある漫画家さんですが、そのポテ子さんが『不妊治療を考えたら読む本』を紹介してくださいました。写真は、『出生前診断』が出た時にポテ子さんが会いに来て下さり、お互いの著書をもって撮ったもの。こうして、不妊治療というものの現実をよーく知っている方から本を認めていただくのはとってもうれしいことです。

◆「不妊治療を考えたら読む本」-子宮を温める暇があるなら、すぐにやめて読んで欲しい本

「不妊治療を考えたら読む本」-子宮を温める暇があるなら、すぐにやめて読んで欲しい本

2016年7月30日


夏の助産院

久しぶりにファン助産院で妊婦健診の撮影。夏のお産は大変だけれど、みんながんばれ。

2016年7月28日


宝島社「GLOW」9月号で

宝島社「GLOW」9月号でコメントしました。
40代向けの女性誌ですが中がとても可愛い「GLOW」。19歳の娘が.これ本当に40代の人の雑誌なの、私らにちょうどいいよ、と喜んでいましたが今の40代ってホントにそうですよね。かく言う私もアラフィフももはや越えアラではなくなっているというのにこの19歳と服の共有が・・・あります。けっこうあります。
そんなこんながあって、「40代で産むのって大変ですか」というこのような特集が必要になるわけですね。『40歳!妊娠日記』(文藝春秋)を書いたイラストレータ・エッセイストの太田垣晴子さんをはじめ何名かの40代出産体験者が自分のリアルなケースを語っています。

2016年7月27日


ロケットスタート

『不妊治療を考えたら読む本』(講談社ブルーバックス)が、発売と同時に「妊娠・出産」「不妊」「ブルーバックス」3部門すべてで1位のロケットスタート、そしてなんとも最高のレビュー!
ありがとうございますー!
本はいつも、出てからレビューが出てくるまでがどきどきします。私の本は、世間でよく書かれていることとちょっと違うことを書くので本当にどきどきするんですよ、いつも・・・。
ですから、こうしてどこかのどなたかに愚直な仕事を評価していただくことで、私は人間を信じて、社会を信じて、働いていくことができます。
夜ですけれど、心に大きな虹がかかった今夜☆

2016年7月23日


早稲田大学オープンカレッジ「出産の戦後史」

私は学者さんのように歴史を語ることそれ自体を目的として研究活動をしたことはありません。でも、出産のどんな側面を書くにしてもそのテーマに特化した戦後史年表を作りながら本を書いてきました。なぜ高齢出産が増えたのか、なぜ少子化が起きたのか、なぜ産科医は減るのか・・・こうした話はとても複雑に歴史が関わっていて、どれもがひとつずつ特別な年表を必要とするテーマなのです。

早稲田大学オープンカレッジの講義「出産の戦後史 お産婆さんから生殖補助医療まで」が終わりました。来て下さった方、広報にご協力くださった方、ありがとうございました。

講座が開かれた八丁堀校は、昭和初期に建てられた「京華小学校」という学校が使われていました。昭和モダンの雰囲気が素晴らしく、そして生声がよく通る、教壇に立った先生たちもさぞ授業がしやすかったのではないかと思われる重量感のある建築でした。だいぶ前に廃校となり、しばらく廃墟だった時期もあったようですが今は上がオープンカレッジ、1階は町内会が入っていました。いつまでも、こういう美しくて堅牢な建て物には現役でいてほしいな。

妊娠・出産をこのオープンカレッジがとりあげるのは初めてのことだったようです。出産関係者や学生さん、一般の方など熱い方々16名にお集まりいただき、70年間の流れに今日の出産の根っこを探った充実の2日間でした。

2016年7月23日


硬膜外麻酔無痛分娩のシンポジウム

7月17日、日本周産期・新生児学会で「母児と医療者にとっての最善の硬膜外無痛分娩は何か?」というシンポジウムで取材者の立場としてパネラーをつとめました。写真は、このシンポを企画した周産期麻酔の第一人者・照井克己医師と。照井先生には、麻酔のことについていつも取材させていただいています。

昨今の無痛分娩の大人気を反映していたのか、シンポの会場は席が埋まりました。そして内容もかなり充実していたと思います。

順天堂大学の板倉敦夫先生からは、「無痛分娩を24時間受け入れます」とウェブサイトで公表した時から始まった分娩件数急増との闘いが語られました。麻酔科医が常駐している病院は少ないので、麻酔分娩では薬で陣痛を起こすことが多くなります。だから、いつでも麻酔を入れてもらえる病院は貴重なのです。薬で陣痛起こすと、うまく陣痛が進まないことがあります。

しかし、薬で陣痛を起こさなくても、麻酔を使うこと自体に、陣痛を弱めてしまうリスクがあり、鉗子分娩や吸引分娩が増えます。だから無痛分娩の多い病院は産科医の負担が重くなってしまうのですが、順天堂大学では、鉗子分娩などの技術力を向上させて対応しているとのことでした。

また国立成育医療センターの伊藤裕司先生からは、麻酔が赤ちゃんの呼吸に及ぼす影響について報告がありました。同病院では継続的な治療を必要とする子は増えていないものの、生まれた時に呼吸を助ける必要がある子どもはやや増えるそうです(2キロ以上の早産ではない子の場合)。

このように、陣痛の痛みを麻酔でとるということは簡単なことではありません。

ただ、副作用を怖れるあまり、麻酔を希望している産婦さんが十分な麻酔を使ってもらえないという問題もあります。シンポジウムの後半では、埼玉医科大学の小澤千恵さんや大橋夕樹先生から、硬膜外麻酔を強く希望する方たちの立場が伝えられました。そのようなケースは、後々まで気持ちの上でしこりを残すこともあるようです。

私は、ひとり一人の痛みの乗り越え方を大切にしていただきたいとお話ししました。と同時に、麻酔も薬剤だということを忘れてはいけないと思います。薬剤には必ず効用とリスクの両面があって、それを天秤にかけながら使うのが基本原則でしょう。ですから必要な人には不足なく使うべきでしょうし、必要ではない人に「使った方がいいよ」と奨めるのもおかしなことだと思います。

また私は、どんなお産をする人にもリラクセーションは出産の準備として必要だと思います。麻酔分娩は完全に痛みを取るものではなく、陣痛の弱まりや血圧の低下がうまくコントロールできなければ量を減らされたり、時にはしばらく切られてしまうこともあるからです。

また、痛みというものが「不安で強まり、安心で弱まる」という性質を持つことはよく知られたセオリーです。今日、こんなに無痛分娩人気が急上昇していることが、出産・育児への不安が増大したサインではないことを祈りたいです。陣痛の痛みには麻酔がありますが、育児の大変さには麻酔がないからです。

シンポのあった日の翌日は、ゆっくりと会場を回りました。その中で特に印象に残ったのが、最終ワークショップの「胎児手術の最新の話題 新しい胎児治療法と日本における展開」でした。

秋から胎児医療の取材を始めたいと思っていたのですが、自分の中でキックオフができたような気がしました。この春は妊娠する前の世界で大忙しでしたが、こうして北陸に移動し、赤ちゃんの身体が出来はじめた時期の世界にゆっくりと浸かれたことはよい気持ちの切り替えになりました。

2016年7月18日


日本周産期新生児学会@富山

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富山は雨にけぶる朝です。この週末は一昨日早稲田エクステンションセンター、昨日は医学書院での「産み育てと助産の歴史」出版記念イベントと連日お話しさせていただき、あと今日1日です。
日本周産期新生児学会@富山
13時30分〜
第2会場 富山国際会議場 ワークショップ5  「母児にとっての最善の硬膜外無痛分娩は何か?」
よかったらいらしてください。
昨晩は硬膜外麻酔分娩のシンポジウムを企画した照井先生たちと北陸のお魚&お酒に感動の一夜でしたが、お話も深く共感できることばかりだったので、シンポがとても楽しみになっています。
写真は、妊産婦支援協議会「りんごの木」の皆さんと懇親会で。

2016年7月17日


ブルーバックス見本出来

来たー、できたー❕
「不妊治療を考えたら読む本」(講談社ブルーバックス)見本刷りが、ただいま到着しました。7月19日発売ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

2016年7月14日


「不妊治療を考えたら読む本」を書いて

新刊本が、講談社ブルーバックスから7月20日に発売の運びとなります。今回は、顕微受精の米国における黎明期に立ち会い、今は名古屋で不妊治療専門施設を営む浅田義正先生との共著で形式はオーソドックスな不妊治療の解説書です。おそらく今ある和書の中で「人はどのように妊娠するのか」「不妊治療とはいったい何をやっているのか」について最もわかりやすい、そして新しい知識が得られる一冊になったのではないかと思います。

しかし今回も私は、日本の妊娠をめぐる医療には、あまりにも高い日本独自の壁があって、産みたい人が新しい医療技術=より効果的でより安全な技術を受けにくい現実があることを痛感しました。ですから、そのことについてもわかりやすいこの本は、読む方によっては「ショックだ」ということになります。

例えば、日本には「排卵誘発剤は卵巣の卵子を早く減らし、卵子の質を落とすから使わない方がいい」など日本独自の「気分」のようなものがインターネットの中に広がっており、排卵誘発剤を避けようとする人がたくさんいます。しかし実際はどうなのかというと、排卵誘発剤はすべての薬と同様に副作用がありますが、体外受精を有効な治療にするためには必要な薬です。薬を使わない体外受精は妊娠しにくいので、英国では、医師は提案してはいけないことになっています。国の機関であるNICE(National Institute for Health and Care Excellence)が「Fertility problems: assessment and treatment」が不妊治療の診療ガイドラインを作成していて、国民が、「効く」という科学的根拠のある不妊治療を受けられるようにしているのです。

でも日本の不妊治療には、専門家集団が科学的根拠をもとにして作った診療のガイドラインはいまだに存在しません。ですから患者さんは、何がよいことなのかなかなか確信が持てずインターネットの海の中で大変な思いをしています。そして時間とお金をどんどん使ってしまいます。

不妊治療は保険の効く検査、治療が少ない状態で、特に体外受精は、他の目的で保険診療に使われていることでもほとんどが自費診療です。これは患者さんの経済的な負担が重いということにとどまりません。自由診療の自由の下で、どこで誰がどんな体外受精を提供しようが、受けようが、国は「われ関せず」と言っていられるのが日本の不妊治療なのです。

こうした数々の問題を抱えた日本は、40代患者さんが多いというまたもうひとつの大問題ともあいまって、採卵当たりの出産率がなんと「世界の最下位」だということがこの本の取材中にわかりました。その一方で、実施件数は世界で最多です。つまり、日本は出産に至っていない体外受精が膨大に行われている国だということになります。

私はもともと妊娠したあとの分野で出産の仕事を始めましたが、そうした人間の目から見ると、この不妊治療の世界には危うさがたくさんあります。そのことに皆早く気づくべきです。周産期では、もしも赤ちゃんやお母さんに何かあったら医療に過誤があったのではと疑われますが、体外受精のようにもともとうまく出産できる率が低い医療は、上手くいかなくても医師が責任を問われることは少ないでしょう。このような医師に特に高いモラルを求めていくべき分野が野放しになっているのは、大きな問題だと思います。

この本は、お話をいただいた時点では「治療がよくわかる本が一冊あればいい」と思ってお受けしました。ところが浅田先生の取材を本格的に始めたとたん、このような問題が次々と浮き彫りになり、海外との違いがよくわかってきました。その結果、この本は図らずも解説本の域を超えてしまいました。日本は、不妊治療後進国です。不妊治療はまだまだ透明性の低い医療だということを、私はこの本を書いてみて実感しました。

この事実が、何かの形で国の医療行政に届くことを祈っています。

それまでは、これから不妊治療を考える方たちは自分で知識を持つ必要があります。そのための手がかりにしていただける本は、今回、送り出すことができたと思います。

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2016年7月9日