坂本廣子さんのサバイバルクッキング

下の子への春休みサービスで、子供クッキングの本で知られる坂本廣子さんの「サバイバルクッキング教室」に親子2人で行ってきました。娘が図書館で坂本さんの本をやたらと借りてくるので応募してしまったら、当たってしまったのでした。

坂本さんは神戸の方です。10年前の阪神淡路大震災に遭われ、その時に料理の専門家として、くふうして食べていくことが生きる意欲につながっていくことを体験されました。

坂本家では娘さんが本箱の下敷きになり、救い出したときは息が止まっていたそうです。それが親の手による人工呼吸で息を吹き返すことができ、「だっれも助けに来てくれない」状況で、自分の力で生き抜く知恵の大切さも身にしみたそうです。

食料が供給されたのは3日後。それまで、冷蔵庫も、ガス・水道・電気もない中で、たまたま家にあるもので食いつながねばなりませんでした。

教室は、坂本さんのそんな体験をもとに、ガスボンベのコンロを使い、洗い物もほとんど出さない方法でおこなわれました。包丁を使うのは野菜を切る程度。ボウルの変わりにビニール袋を使い、お皿も新聞紙を折ってくぼみを作り、その上にアルミホイルを敷いて作りました。

1週間も食べなかった私に数日間食べられないことへの恐怖はまったくないけれど、暖かい料理が命を暖め、手足の先まで力を注ぎ込む感覚はよくわかります。まして恐ろしい震災のあとでのあの感覚って‥‥想像すると胸が熱くなります。

メニューはすいとん、パンケーキ、乾物サラダ(切り干し大根、棒寒天、わかめをビニール袋の中で揉んでもどし、お醤油とごま油をたらしただけ)。日米の伝統食で構成されたメニューで、「伝統食=保存食=非常食」という関係がよく見えます。もっと知りたいと思う方は、坂本さんが一緒に被災されたイラストレーターさんと書かれた『サバイバルクッキング』(偕成社)に詳しいです。

ところで、この企画は日清食品でした。社会貢献兼プロモーション? 本社にあるクッキングスタジオでおこなわれ、その壁には「昭和33年チキンラーメン発売」に始まる日清食品の年表が。おみやげパックの中にはマイクロビーズでできた「出前一丁特製クッション」なる謎のグッズが入っており、帰宅後きょうだいで争奪戦に。

娘は、帰ってからずっと出前一丁特製クッションを枕に(とられないようにしている)、「食べることは生きること」と坂本さんに署名していただいた『サバイバルクッキング』を読みふけるのでした。

<写真>できあがったサバイバル料理二人前。すいとんのお椀だけはプラスチックですが、ビニール袋で覆ってあるので汚れません。 2005/03/29