暮れゆく「卵子の老化」の年

紅葉も北風に散らされるようになり、いよいよ今年もおしまいムードです。今年はこちらの日記を本当に書いていなくて、時々見に来て下さってきた方たちには申し訳ないことをしてしまいました。それでも,今日こうして久々にこちらに来ると、フェイスブックやツイッターの画面とはまったく違う白い、白い余白に、紙に鉛筆を持って向かっているようなホッとするものがあります。もう、こんなブログはかなり貴重になってきているのではないでしょうか。

紅葉を見ていると、ちょうど一年前のこんな頃、名古屋に顕微授精の第一人者である浅田義正医師を訪ねたことを思い出します。その訪問はその後、当時、これから卵子の老化についてシリーズ報道をやっていきたいんだと言っていたNHKディレクターさんも同席してくださった4時間にも及ぶ大変熱い取材につながりました。そこで、ようやくつかめた確かな手応えをにぎりしめて、何とか新書を書き上げました。ようやく、その新書も来年の3月刊が正式に決定しました。

この1年は、NHKの卵子の老化報道をはじめ、新しい出生前診断の上陸など、高齢出産をめぐる話題が吹き荒れた1年でしたが、こうした議論の起きたあとの社会に向けて上梓できることが嬉しいです。

人の命は永遠ではないこと、そして生まれてくる命にも完璧な命などあり得ないこと、そうしたことに社会が気づいていくのはすご〜く大事なことです。

内容は、35歳以上の妊娠から育児まで。加齢による変化、不妊治療、出産、出生前診断、産後、育児などその時々に起きる不安や迷い、誤解などについてその道の第一人者や国内外の報告、経験者の声などを集めています。

たくさんの35歳以上出産の方にお話を聞いて参考にしましたが、あまりにもドラマを持つ方が多かったのでちょっと言葉を引用させていただくだけではもったいなくなり、ストーリーで登場していただく頁も作りました。ここが多分、読む方にはかなり伝わるものがあると思います。不妊治療が必要になっても、帝王切開が増えても、先天異常の確率が増えても・・・それでも、子どもを得た人たちには「だから何ですか?」と言えてしまうような満たされた時間が流れていました。「人にはすすめません」と言いながらも、自分の出産には本当に納得していることがはっきりと伝わってくる、スケールの大きな女性たちにお会いすることができました。

先週は母性衛生学会という産婦人科と助産師さんの作る由緒ある学会で、この本の内容について一足早く、1時間も講演をさせて頂くというありがたい機会がありました。新しいパワーポイントのスライド50枚作り、晩産時代に向けて産婦人科がどのように変わっていってほしいか、女性から汲み上げたものを精一杯お伝えしてきました。

いよいよ師走。年があければ時間はつるつるっと過ぎてしまうでしょうから、年内にできるだけこの一冊を進めなければなりません。新しい出生前検査についても妊婦さんの声をどんどん出そうといくつかの企画が進行中なので、そのことと、でき得れば今年中に新書のゲラを手にしたいということが年内の目標。 2012/11/27