「やっぱり知りたい少子化のはなし」次回の取材で横浜国立大学の大門正克先生をたずねる。大門先生は市民がどう感じていたかを大切にした歴史研究をなさっているので、戦前、戦中の「産めよ増やせよ」政策は現実の国民にとってどのようなものだったのかをうかがったのでした。
1940年代の新聞検索をすると「未婚者退治」などぎょっとする見出しが並んでいるのですが、国民がこれに乗ったとは到底思えないのです。思いたくないというのもありますが、どんな時代であろと人間には考える力というものがあるはずですから・・・。
大門先生の見方は私の見方を裏付けてくれました。ただ、この時代は母子保健が劇的に進化して赤ちゃんがたくさん亡くなっていたお母さんたちにとってありがたい面もあったから、国民は、少なくとも洗脳されにくい年齢に達していた大人たちは、うまく国策を利用してわが子を大事にできたのではないかということでした。国は国民に強い協力を求める時は、人々の願ってきたことをするというパラドックスが生じるそうで、医療・福祉が進んだりします。
ただ、とても痛ましく忘れてはならないと大門先生が指摘したことは、当時生まれた子どもたちは、死産や病気は減ったけれど、たくさんの子が戦火の中で亡くなってしまったということです。この結末は国民に、「産みましょう、と言われても国の話に乗ったら大変だ」という今なお消えない警戒心を植え付けたかもしれません。 2014/05/31