今月は、浅田レディースクリニック院長・浅田義正先生との共著を書き上げるということで、かなり椅子に座っているあんまりよろしくない生活です。本は講談社ブルーバックスで、この夏に出ることになりました。
日本はART(体外受精、顕微授精など)で妊娠する人が急増していますが、海外と比較して、実は妊娠率がとても低いのです。それはなぜか。ひとことで言えば、この本はそういう本です。
理由のひとつは、晩産化はいわずもがなですが、どうやら、日本の女性には「できるだけ薬を使わないで自然な妊娠をしたい」と願う自然志向が強くあるようなのです。そして、薬を使わないようにつとめれば、妊娠率は下がります。自然○○というものは、おしなべてお味噌と同じ、「待つ」ということがポイントですから、時間がかかってもいいという覚悟が要ります。その結果、待っても妊娠せず、40代になり、タイムアウトになってしまう人も出ます。
薬を使わない場合、頼みになるものは健康法の数々です。そこで女性たちをとりまく妊娠、出産に関する情報は、「冷え」の解決法やよい食事についてのものばかり増えて、医療についての情報は減るばかりです。
浅田先生は、とても面白い言い方ですが「患者さんは癒やしを求めているが、僕は妊娠を求めている」と言います。確かに、妊娠しなくてつらい状況では癒やしがどうしても必要。でも、そんなに癒やしが必要なのはなぜかというと、それは、妊娠しないから。
今のARTは治療期間が短期化する傾向にあるので、一定期間は全力で取り組むのもいいのではないかと私は考えています。無理のない範囲で軽く治療するだけと決めるのならそれもひとつの選択肢だけれど、それなら不妊治療はしないという手もある。
「卵子の老化を誰も教えてくれなかった」と言う人は減りましたが、その先はまだまだ情報が少ないと思っています。2016/04/19