英国の小さなカフェで展示された、写真家でダウン症の子を持つ親でもある人たちによる小さな写真展。それは、子どもがダウン症だとわかって以来、ダウン症のある人たちの写真はどれも症例として撮影されていることに失望していた写真家たちが、自分たちが見たい写真を撮る試みだったそうです。
英国ダウン症協会などが支えた写真プロジェクトの展示「ダウン症 家族のまなざし」を見てきました。英語のタイトルは Shifting Perspective。
医学の対象ではなく、福祉の対象でもない、その子そのものを見ている写真群はとても雄弁です。家族の見え方を見せてもらうことで、家族ではない人間の目も変わります。家族のまなざしには、社会のまなざしを変える力があります。それに、そもそも社会のまなざし自体が、誰かのまなざしによって誘導されたものなのではないでしょうか。
ダウン症という病名などない時代もあり、その頃には染色体の数が違う人がそうではない人と明確に区別されることはなかったかもしれません。家族の目にうつるのは、その時代の彼らなのかもしれません。
写真家たちのテーマは、就労、母乳育児、ティーンエージャーの楽しみなどさまざまですが、私が釘付けになったのは、ダウン症と告知されてまもない時期に撮影されたという小さな赤ちゃんと母親の母子像でした。
背後の風景は彼女たちがこれから立ち向かう未来を表しているようです。その厳しさへの漠とした不安を胸に、それでも母親はとても強い力で赤ちゃんをきつく抱きしめています。そしてこの写真家 フィオナ・イーロン・フィールドさんは、今、胎児がダウン症だと知っている妊婦さんを撮っているそうです。
私は、このポストカードを身近に置いて、今度の新書を書こうと思います。
このママの目が、何かをいつも問い正してくれそうな気がするから。
◆ダウン症 家族のまなざし Shifting Perspective 3月30日(日)まで
http://www.jdss.or.jp/2014eventimg/2014event01.pdf
2014/03/27