放送大学で心理臨床の講義に出演

2016年度放送大学の「心理臨床と身体の病」という科目で一コマゲスト出演させていただきました。聖マリアンヌ医科大学で、喪失ケアなど周産期の心理臨床という分野を切り拓かれた臨床心理士・橋本洋子先生が担当の「生殖医療、出生前診断と心理臨床」という講義です。
テイクは、台本を橋本先生と作り込んでいたにもかかわらず時間内に納めるのが難しく(なにしろ『卵子老化の真実』と『出生前診断−出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』の内容プラス橋本先生の心理のお話を43分に納めるので!)終わった時はけっこうな達成感が。
でも、煮詰めた分、橋本先生に助けられた分、このテーマについてまたひとつ歩を進められたような気がします。
それは、出生前診断のような矛盾に満ちた葛藤をいかにありのままに受けいれるかということ。出生前診断は取材を始めてからずっとその階段を一段ずつ上ってきた気がしますし、ある意味では階段を降りてきたという方が当たっているのかもしれません。
今、日本のNICU(新生児集中治療室)には、総合周産期母子医療センターの場合、臨床心理士かそれに類する人を配置する努力義務が課せられていて、約7割の施設で達成されているそうです。そこで心理士さんたちは、相談受けます、とすわっているのではなく、すべてのお母さんに話しかけ、赤ちゃんと過ごす時間に寄り添うとお聞きしました。
出生前診断との関わりでは、検査で陽性とわかった妊婦さんと遺伝カウンセリングのあとにお会いすることが多いそうです。
doing を役割とする医療者に対し、何もできない人としてbeing「ただ、そこにいること」を役割とし、まとまりもなくただぽつぽつとこぼれてくる言葉を受けとめる器になるという心理士さんたちの仕事。
橋本先生は、doingが一杯の空間であるNICUに入室した時「何もできない人間がここにひとりいることで、お母さんたちの心に何か良い効果が現れるのでは」と直感的に感じて、それが今の仕事のインスピレーションとなったとあとで話してくださいました。この感覚は、一般人としてすごくわかる気がします。
橋本先生のシリーズ講義は全部で三時間あり、妊婦さんに関わる方にはぜひ見ていただきたい・・・けれど、放送時間はまだわかりませんので、またお知らせします! 2015/09/25