『出生前診断』発売

出生前診断がこれを書いている3日後の4月13日に発売になります。この日を迎えられて本当によかった!ご協力いただいた方々には、心よりお礼を申しあげます。

実は今年の始まりには、私はかなり緊張していました・・・昨年末、第三子の受験と私の校了という2つの修羅場を手帳に書き込んだところ、ピークが、よく、まあ、こんなに、というほど重なっていたのです。いつも本の終わりにやってきた家事の全面的放棄ができない!というプレッシャーは、私にとってけっこうつらいものがありました。

しかし、子どもの方も何とかうまくいき、私も無事にこうして新刊を発売することができてサイトの更新などしております。今になれば、今年の春は一緒にがんばったよね、という親子の思い出にもなりました。桜を見た時は、本当にゆるみました。

今度の本はタイトルもストレートに『出生前診断』です。新書としては「ふかふか」感のある300余ページに、出生前診断の日本における40年のあゆみや海外の状況も書きました。

この科学技術と私のおつきあいは20年くらいになります。初めての母体血の検査「母体血清マーカー検査」というものが出た時、私は何度も取材をしていました。

そうこうするうちに、自分が36歳の高齢妊婦となり、今春受験した娘を妊娠したのですが、その時にいきなり超音波検査で「NT」と呼ばれる首の後ろのむくみ(染色体疾患などいろいろな先天性疾患の指標のひとつ)を測られ、「大丈夫だと思う」と言われましたが「でも、最近は血液検査だけである程度染色体異常がわかる検査もできました。受ける時は何日までに来て下さい」とあっさり、ものの1分程度の話をされました。

超音波で「大丈夫だと思う」と言われると、私の取材した妊婦さんたちは、皆さん「先生が見てくれて大丈夫だと言ってくれた」と言います。でも、私は取材経験から、こうした簡単な検査は「異常の可能性が高いです」と言われる人もいるという事実がよくわかっていました。そして、その時「これは、妊婦健診が大変なことになっている!」と思いました。これが、私の出生前診断についてのルーツです。写真は、その妊娠の時の私です。

案の定、取材の中で、私は気軽に検査を受けた人、いきなり医師にNTのことを言われた人が何人もパニックに陥ったという経験を聞くことになりました。そして、この度の本のためにまた取材してみると、私が18年前に経験した状況を次々に聞くことになったのです。その中には「もう妊娠はこわい」と言った方もいます。

どうして日本のお産はこんなに変わらないのでしょう。

新型出生前診断や着床前スクリーニングなどの最先端技術が話題を集めています。確かに、こうした新技術の威力は大変なもので、これについての説明にも私は全力を注ぎましたが、実は日本の出生前診断は、もっと基本的なところが一番問題なのだと思います。それは、妊婦さんの立場に立ってものを考えるということです。

では、なぜ日本の妊婦さんは、妊婦さんの立場に立って考えてもらえないのでしょう。それは、やはり日本は女性が物事を決めることに賛成できないところがあるのだと思います。私の2年近い取材は、今、このあたりに着地しつつあります。
2015/04/10


夜桜能

靖国神社では「夜桜能」というイベントが毎年行われているそうです。1日、チケットをいただいたので初体験してきました。満開の花の下、かがり火の火入れ式から始まる三時間の贅沢でした。
お能は先日初めて行ってこれで二回目なのですが・・・私、これはちょっとはまりすぎるので危ないです。本当に危ない。あちらの方へ連れて行かれます。 2015/04/02


『出生前診断』表紙画像が来る

『出生前診断−出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』の表紙画像が来ました。やっぱりこれを見ると「本当にできたんだなあ」という実感があります。 2015/04/01


出生前診断の本が手を離れる

先ほど、次の本『出生前診断−出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)が印刷所に入りました。あとは、もう「行っておいで」と後ろ姿を見送るのみ・・・。 2015/03/25


岡山大学のリプロカフェへ

岡山大学大学院保健学研究科の中にある「リプロカフェ」で。卵子老化、出生前診断など、なさっているお仕事にずっと共通点を感じてきた中塚幹也先生と、やっとお話できました。
上村茂仁先生のFBから情報をいただいて、岡山県の少子化対策「妊孕性等普及開発プログラム」の講習会へ妊孕性教育の取材にうかがった帰りです。このプログラムは中塚先生が監修をつとめコミック教材へのメッセージも書いていますが、生き方の押しつけを排したその姿勢にはこれまでのヒューマニズムあふれるお仕事が息づいています。 2015/03/20


アルプスの美しい町で

雄大なアルプスの町、長野県駒ヶ根市で講演させていただきました。ここも晩婚・晩産化、少子化、そして産科医不足のすべてに悩んできた町のひとつです。駒ヶ根の結婚や出産の平均年齢は、東京都と変わらないんですよ。
今、お産はひとつのクリニックと開業助産師さんたちの助産院が支えています。少子化対策の部署の室長さんは三人のお子さんがいる女性。講演には手話通訳の方が入り、市のすべての人を応援したいという願いが伝わってきました。市長さんも、はじめは「私のようなおじさんが妊娠の話を聞きに来ていいのかな」などとおっしゃって引いていたのですが、結局真剣な面持ちで最後まで聞いてくださいました。
皆さんの努力が花開いていきますように・・・。 2015/02/20


あの『育児の百科』の編集者さんと会う

今日はすごい方にお会いしました!
岩波書店が百年の歴史の中で一番売った本は何だと思いますか?
それは、松田道雄先生の『育児の百科』なのです。『育児の百科』とは核家族化が進んできた高度経済成長期に激変する子育てを支え、150万人の母親が座右に置いた日本の代表的な育児書です。
私は今度岩波で出す人物史の一部で松田先生について書くのですが、その取材として当時の担当編集者さんにお会いしたいとお願いしたら、87歳で大変お元気な田沼祥子さんという編集者さんにお会いすることができました。
田沼さんが子育てをしながら超人的なガンバリを見せて、この20世紀の大ベストセラーができていたことがわかりました。そして、その後の介護生活のお話も忘れられません・・・。田沼さんは松田先生のご使命でこの本をたったひとりで担当されましたが、先生は子どものいる女性とこの本を作りたかったそうです。
私は松田先生の本で自分の感じていたことに自信を持ち今の仕事を始めた人間なので、今日は原点のメイキングに触れられて、本当にしあわせでした。同席したほかの編集者さんたちも大感激していました。2015/01/27


立冬に

ぽったりとした満月が空に浮かび、今年も立冬となりました。

今年は昨年出した『卵子老化の真実』の流れで出産年齢に関する講演を各地でさせていただく機会が多く、遠方はけっこうあちこちへ出かけたのです。現在の政府は出産対策に熱心ですし、加速する晩産化に歯止めをかけるべく、自治体で産み時についての支援を始めるところも少なくないようです。

しかし、今年の私の生活は、夏以降、その講演の仕事を除いて本当に出ていません、つまり都内は歩いていません。禁欲的に、次の本をまとめるために時間を割いてきました。でも、始める前からわかっていたことですが、出生前診断について語るのは本当に難しい・・・。

いつしか、出生前診断、遺伝学、そして中絶といった見出しの本に埋め尽くされている今の私の本箱。こうした言葉を娘はどう思って見ているのかと思ったら、今、高校の社会には世界史、日本史などと並んで「現代社会」という科目があり、そこで出生前診断は扱われているのだそう。

母体血血漿中のフリーセルDNAを調べる検査「NIPT(新型出生前診断)」が始まって1年半が過ぎ、新聞やテレビが報道合戦をしていた時期は過ぎましたが、今だから、書けることがあります。出生前診断には、知って驚いた事実がいくつもあり、それを咀嚼するのに、私も長い時間がかかりました。でも、必ず、この原稿は、今年中に校正にして年を越したいです。

そのために、目標を達成したお祝いの旅を予約したりした、この週末。それから、今日は適当に大量にりんごを煮たので、これからアップルパイにします。余裕ありすぎでしょうか。でも、もちろんパイ皮は冷凍。
2014/11/06


「国家総動員法」時代を考証してみる

「やっぱり知りたい少子化のはなし」次回の取材で横浜国立大学の大門正克先生をたずねる。大門先生は市民がどう感じていたかを大切にした歴史研究をなさっているので、戦前、戦中の「産めよ増やせよ」政策は現実の国民にとってどのようなものだったのかをうかがったのでした。
1940年代の新聞検索をすると「未婚者退治」などぎょっとする見出しが並んでいるのですが、国民がこれに乗ったとは到底思えないのです。思いたくないというのもありますが、どんな時代であろと人間には考える力というものがあるはずですから・・・。
大門先生の見方は私の見方を裏付けてくれました。ただ、この時代は母子保健が劇的に進化して赤ちゃんがたくさん亡くなっていたお母さんたちにとってありがたい面もあったから、国民は、少なくとも洗脳されにくい年齢に達していた大人たちは、うまく国策を利用してわが子を大事にできたのではないかということでした。国は国民に強い協力を求める時は、人々の願ってきたことをするというパラドックスが生じるそうで、医療・福祉が進んだりします。
ただ、とても痛ましく忘れてはならないと大門先生が指摘したことは、当時生まれた子どもたちは、死産や病気は減ったけれど、たくさんの子が戦火の中で亡くなってしまったということです。この結末は国民に、「産みましょう、と言われても国の話に乗ったら大変だ」という今なお消えない警戒心を植え付けたかもしれません。 2014/05/31


人口減少は文明が入れ替わる時の現象

歴史人口学の鬼頭宏先生にスケールの大きな話を聞く。人口減少はある文明システムが終わって行く時の現象で、過去には縄文の末期、鎌倉時代に起き、農耕や貨幣経済の発展で上昇に転じた。現代は幕末から続いた上昇期の後の停滞で次のイノベーション前のボトムに当たるという。
次のイノベーションとは何だろう?
5月24日に行われたシンポジウム「こどもが生まれにくい国 少子化・生殖のゆくえ」(主催:社会デザイン学会、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科、立教大学社会デザイン研究所)で。 2014/05/31